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2009年9月 3日 (木)

市村弘正

9月3日

午後2時くらいに市村弘正さんに電話してみたが、誰も出なかった。3時過ぎにもう一度してみたら、ご本人が出て、今起きたばかりで、ご飯を食べていると言う。30分後にかけなおしてくださり、久し振りにお話する。ずっと、お身体のことが気になっていたが、4か月も外国に行かれていたと聞き、とにかく声が聞きたかった。

電話する前は、すごく緊張したが、話していたら、以前お会いしたときの感じ、(初めてお話した時からまるで昔からのなじみのような感じだった)に戻る。結局1時間半くらい話していた。

生まれて初めてお話した時から、私たちの話の内容はいつも同じ。「お互い社会性がない、鎧を何重にも着て社会に溶け込んでいる人もいるけど、あなたの場合は「剥き出し」っていうんですか、社会に需要のないことばかりやってるから生活が苦しいんですよ」と言われる。

塗炭の錆びのつくる絵を眼で追いながら撮ったり、なめくじの這った痕を探したり、一番絵になる蜘蛛の巣を求めて、いくつもいくつも蜘蛛の巣を探して歩いたりするのが一番楽しい、と言うと、「スーザン・ソンタグの「エロティクス」そのものをやってるわけだから。「反解釈」の「反」は、「アンチ」じゃなくて「アゲインスト」なんですよ。社会的解釈を加えられていないもの、まだいじられていないもの、と言う意味。」と言われた。つまり、社会市民的にはまったく理解されないということ。

スーザン・ソンタグも映画を撮った、と言われて、「エロティクスなもの、そのものを撮ったんですか?」と聞いたら、「いや、彼女は全然芸術の才能がないから、理論ずくめのことを映画にして失敗した。」と笑っていた。

市村さんも私も身体的にはいつもぎりぎりである。病院といろんな薬のお世話になっている(私の場合は、全く不眠にもならず、身体は弱いが精神は動物並みに健康と言われるが)。けれど市村さんと話すといつも感じるのは、烈しい生命の何かである。その生命の激しさで、(お互いに)我が身を転げ回らせるほど苦しめているのだが、すっと、核心に入ってしまう会話が、同類として、すごく端的で気持ち良い。

(特に弱い者に対して)とおりいっぺんの対応でなく、心の奥の本性において、冷たくない人である。そしてなんとも言えないキュートな魅力を持っている。さまざまな屈折と、あらゆる局面で割り切れないような、不器用で曲がりくねっった性格が、ユーモアと不思議な色気で人を惹きつける。

「書いていないとおかしくなってしてしまうから、書かずにいられない。あなたが絵を描かなければいられないように。このことを見つけたのが最大の良いこと。」

「仕事で、行きたくないのに行くのは最悪の行き方だけれど、外国は、行きたいと思ったときはすぐに行ったほうがいい。何か変わろうとして行くなら、必ず何か変わるから。」と言われた。

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