全日本フィギュア 浅田真央 高橋大輔 村上佳菜子
12月25日
浅田真央「愛の夢」、すごかった。
フライリヒラートの詩を思えば、優雅で繊細な中にも激しく生命が燃え、躍動していた。甘やかで優しいと舞いと言うよりも、今までで一番スケールが大きくこの曲が演じられたように見えた。一本の張りつめた線がピーンと通っていた。終わった後の何とも言えないほっとしたような顔が素晴らしかった。たとえ何があったとしても、その瞬間を精一杯に生の最大振り幅を生きようとする輝き。
生きているかぎり精一杯愛しなさい、という言葉の愛の対象はもうすでに死んでいるものでも(人間でない生命でも)いい。90歳を超えた大野一雄先生が震える手で踊っていた「愛の夢」の記憶が重なる。大野先生は戦争のときに関わったたくさんの死者のための「愛の夢だった。」何十年も決して語らなかった戦争の体験を最晩年になってから語った、と聞いた。
一瞬ごとに過去になってしまう生の中で、作品のリアルは常に過去、記憶との関わりであり、有限な時間の中に生まれ、他者の記憶にどれだけとどまるのか、消えてまた変容して生まれるのか。眼からはいってきて直接細胞を震わす痛みに耐える柔らかい身体。しなやかで強靭な身体。
12月24日
全日本フィギュア 男子フリーと女子ショート。
浅田真央。個性的な衣装で、足の脇のところが何段にも開いていて、そこから空気がはいって、藍銅鉱(アズライト)色?ラピスラズリ(ウルトラマリン)色?の透明な布が風をはらんでくるくるひらひらと舞う。薄い胸と細長い手足が幻惑的。月夜に光る銀砂。凛々しく、すばやく、伸びやかで力強く、幻想的で、きらめきと軽快さと哀愁が同時にあった。
村上佳菜子。すごい成長ぶりで驚いた。去年の明るくはじけた演技は自分の好みとしては好きでなかったが、今回のシリアスさに俄然興味が湧いた。自分自身で大人の表現をものにしたいと強く希求した結果、非常に機微のある演技に変身していた。首や肩のねじりかた、ぐっとためるように腕を突き出すような重厚な抵抗感のある動きなど、感心してしまった。
高橋大輔。ショートが鳥肌立つ凄さで、最高に動きがきれていた。て、フリーの前に練習しすぎてフリー本番疲れてしまった、というようなことを言っていた。私たちの身体が有限であり、たえず何かの影響を受けていること、いかに練習が日常化し試合慣れしているアスリートでも、体力温存のぎりぎりのきわとか、ほんのかすかな調整違いというものは計り知れないものがあるのだろうと思った。それにしてもショートの演技は本当に素晴らしかった。
12月22日
S.Mさんから電話。G社の件など。そのあとYさんと電話。次の本の出版社が決まる。年内出版関係者は目が回るほど忙しいみたい。
12月20日
医者に行く。クラリスロマイシン、ハイスロック、セレガスロン、タイプロトン、リタクロス。
12月19日
熱が下がらないので母の迎えを申し訳ないが代理の人に頼む。
「社会におけるアートの役割」という言葉にずっとひっかかっている。ベルリンのハウス・シュヴァルツェンベルク(ベルリンの中心街にある古い戦争の傷跡の残る建物で、ベルリンのアートカルチャーシーンの発信地のひとつ)を多国のアーティストのよりどころとして盛り上げるのはいい。なぜなら旧東ドイツだったという大変な歴史があり、今は多国の人達が流れ込んできたところだからだ。ただ思いつきで造形をしたり狭い観念の中でナルシスティックに閉じこもる若い子だけでやったのではだめだと思う。かつてあった素晴らしいものや、かつて有り得たかも知れない素晴らしいものを知っている多国の人を呼ばなければ。
だが原発事故を体験して、何も解決していなくてこれからもっとひどいことがたくさん起こるだろう日本の、今のアートとは何ができるのだろう。身体を通らない記号をアートとして読みとらせようとする表現行為は事実としての惨い体験や現実を逆に絵空事のように軽くしてしまう。証言をできる可能性のある(証言の資格のある)人はいわゆるアート関係者ではない。当事者(もちろん関東に住む私たちも当事者であり、あの全身が痛むような不安と怒りを忘れるわけがないのだが)の声に耳を傾けようとすることの実践、問題意識の明確にすることと現実の重さに見合う表現をどうしていくのか。
12月19日
ピカソは、最初にパリに出てきたときに一緒に住んでいた親友カサヘマス(拳銃自殺した)の死に顔を描いた絵、3枚を晩年まで人目に触れぬように隠していた。描いておかなければならないもの、かつ他人に触れられたくないもの。
12月18日
12月の初めからずっと7度弱の熱で、頭痛に苦しんでいたが、パブロンとタイレノールでごまかしてきたが、ついに夜急に高熱が出る。吐くのをこらえて寝る。
12月9日
母を北新宿のKに送る。きょうはめずらしく体調が良さそうだった。
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