高橋大輔『月光』 浅田真央
2月10日
チューリップ(エキゾチック・パロット)の水彩素描(2月10日)。八重咲きではないが葉のような萼のような花弁のようなものがついている。(画像はクリックすると大きくなります)

フィギュアスケート四大陸選手権2013。祝!浅田真央トリプルアクセル成功。
高橋大輔は浅田真央とは明暗を分ける結果となったが、、非常に高いリスクを背負って、自身のぎりぎりまでレヴェルを上げて新たな次元に挑戦したことは同じだろう。
高橋大輔の『月光』。瑞々しく澄明な冴えた音。エフゲニー・キーシンの演奏だと知り、キーシンの12歳の時のリサイタルの動画を見てみたが、素晴らしい音を奏でる神童、しかも美少年(現在は41歳)。
藍色の闇のように厳かに始まるおなじみの旋律。身体の線を長く見せて、最高に優雅に、雰囲気たっぷりに流れながらジャンプ。そして後半の星が一気に砕け散るような高速のピアノの音の洪水。速く力強く劇的な難しいステップ。
高橋大輔の魅力は、ただ激しく速い動きをやれるという以上に、「パッション」を生きる、というのか、激情と同時に「受苦」の宿命を踊って見せることができるフィギュアスケーターは彼しかいない、と感じさせるところだと思う。
演技しているというより内側から湧いて出てくる動きの織りなす色や情感が深く濃やかであり、この有名なクラシックも彼独特のシリアスで熱のこもった強烈なものにしてしまうだろう。
失敗はあったにせよ、まだ変更してから時間が浅いということで、これからの練習ですごいものになるという期待がふくらむプログラム。何よりも競技人生初めてシーズンの途中でプログラムを変更したというものすごいリスキーな挑戦、そのあくなき向上心にほれぼれする。
フリーはめずらしくジャンプの失敗があったが、ファンというものは決してがっかりしたりしないのである。次の世界選手権が最高の舞台となるように、今回の試合はそのためのステップだったと思う。
浅田真央、あんなにも望んでいた3Aの成功、おめでとう。じぶんだけの武器を一度失って、苦しんで苦しんで、長い時を耐えて努力して、ついにまた取り戻した気持ちはどんなに晴れやかだろう。
ショートの直前の6分間練習の時、背中が美しい、と思って見ていた。細くそがれた身体についたしなやかな筋肉が美しい。調子は上向き。
始まる前の微笑んで上を向いたポーズ。ガーシュインの曲が始まって驚いたような振り、笑顔で肩をすくめるポーズ、しかしスピードをつけて滑り出しだ顔は全然笑っていない。3Aが決まってからあとの笑顔は心からほっとして思わず出てしまう本当の笑顔。
最後のステップの時は余裕すら感じさせる解放された笑顔。アナウンサーは「楽しかったですね~!」と言ったが、私は「身体表現」、「生成する造形」として見てしまうので「楽しい」とは感じず、「キレがいい」「速くて端正」「かっこいい」「難しいことを涼しい顔でやっている」と感じる。
リンクから上がる時、佐藤久美子コーチに抱きついて「ああ~っ」と声を漏らしながら満面の笑み。
本当に心から充実した笑顔が出てよかった!!
フリーの『白鳥』。
第一パート、気高く、端然とはじまり、無表情のままトリプルループ、意思の強さを秘め、運命のトリプルアクセル。有名な旋律は繰り返し徐々に荘厳に力強さを増し、スピンで大きく盛り上がる。
第2パート、細く繊細で高いバイオリンの調べにのって抒情的に。このパートのなよやかな動き、特に腕と手首のゆらめくような動きに感心した。ここまでしなやかに動物的、植物的、妖精的な浅田真央のなまめかしい動きを見たのはこのプログラムが初めてのように思う。
第3パート、軽やかに飛び跳ねて舞う動き。優雅にリズミカルに。
第4部、ラストは黒鳥のグラン・フェッテ(フェッテ・ロン・ドゥ・ジャンプ・アン・トゥールナン?)荘重で華やかに力強く。実際はものすごく難しいことをやっているのだろうが見た目は思いっきり解放されたように、回転、回転の細かいステップ。
浅田真央の魅力は何と言っても最高に難しいことを端然とやるところ、振付以上に身体の内から湧き上がる美しい身のこなし、余計な肉のない体線と細長い手足の切り裂く空間、わざとらしさやこびがなく、身体の動きそのものが醸し出す透明感と硬質な抒情。
初雪のような新しい衣装も輝いていた。本人の自信とやる気が眩しい。200点越えにバンクーバー五輪の時の興奮が蘇ってきた。世界選手権ではさらに完璧な演技になるだろう。
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浅田真央『鐘』の芸術性について書いた「もっとも劇的な雲、異空間の生成――浅田真央『鐘』に」が収録されている『反絵、触れる、けだもののフラボン――見ることと絵画をめぐる断片』もよろしくお願いします。
ものを見るということはなにか、眼からはいってきて胸を震わすものについて、私が出会った(もう亡くなってしまった)真の芸術家について書いた本です。谷川俊太郎さんが帯文を書いてくださっています。

チューリップ(フラッシュ・ポイントとフレミング・フラッグ)の素描。フラッシュ・ポイントは葉の縁にピンクのすじがはいっている(2月6日)。
開花したフラッシュ・ポイント(2月8日~2月9日)。
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