難病、友人、芸術
5月21日
仕事を通じて知り合ったとても信頼できる友人から久しぶりにメールが来、4月から大学病院に入院していて、やっと病名が確定した、と知らされる。
アレルギー性肉芽腫性血管炎。あまりにショックで愕然とした。
彼女はたまに仕事のパートナーを頼むと本当に責任持って仕上げてくれる人で、私の性格も感覚も理解してくれている数少ない友達。彼女もお母さんの介護をしていて、猫好きで、介護の話で長いメールをやりとりたり、ごくたまにだが長電話で話したりした。それこそ人に話せないような苦悩も彼女とは話し合ったりしていた。
それからずっと、その病名について調べていたが、年に新規患者は100例くらいだという。
もともとうわついたところがない、とても正直で忍耐強く、なんでも一生懸命やる人だから、彼女にまた試練が訪れたことに、胸がしめつけられてたまらない。なんでこんなたいへんなときに、さらにたいへんな試練が、と思ってしまい、すごく苦しい。
長い治療とリハビリになるのかもしれないが、本当に心から快癒を願っている。
5月19日
最初に、イカ墨色のインクで描かれた線の、片目が暗くつぶれた自画像を見た。
なんてすごい絵なのだろう、と強烈に惹きつけられたが、Dunkles Gesicht-Selbstbildnis Objektbezeichnung: Grafik erweiterte Objektbezeichnung: Das Gesicht Sachgruppe: Zeichnung / Grafik Hersteller: Gramatté, Walter Maße: Papier: H: 53,5 cm, B: 38,3 cm Platte: H: 25,4 cm, B: 17,2 cm Material: と書かれているキャプションのどこに作家名があるのか、すぐにはわからなかった。
しばし考えてWalter Gramatté の絵だとわかる。
ドイツ表現主義、マジックリアリズムの画家だが、種村季弘先生が書いていらした『魔術的リアリズム』という本にものっていなかったほど日本ではマイナーな画家で、私の好きなベルリンで生まれ、病気と戦争に苦しみ、ハンブルグで33歳で夭折したと知り、この画家への思いを強くする。
水彩を見ても、すごい才能の人だと感じる。ノイエ・ザハリヒカイトの中では、妙にみずみずしく私の心に迫る画家。
最初に絵を見て、いつも直観的に判断する。ものすごく惹かれるか、何の関心も持てないか、あるいは完全に拒絶するか。
歴史的に既に評価の定まっている作家しか批評しない(言説に参加しない)ような美術批評家には吐き気がする。彼らにはものを直接見る力がない。
5月18日
シカゴに住むアーティスト、ジェニファとメールでやりとりする。
最初、彼女の感覚がいい、印象に残る人だと思ったのは私のほうで、あとから彼女からメッセージが来た。
彼女は博物学、動物学に深い関心があり、同時に深い心の闇、死を思うような作品活動をしている。行動として真摯に続けているが、作品としての絵はすごく少ないことも共感できる。
彼女の作品は生きる困難さそのものであり、軽薄な自己顕示がない。
彼女は私の絵をすごく気に入ってくれて、私のホームページのリンクを自分のホームページに載せてもいいですか、と丁寧な英語で言ってくれた。私は、もちろんありがたいです、私は英語が得意ではないけれど・・・と答えた。彼女は、これからはなるべくシンプルな英語で話しかけるようにする、と言ってくれた。
「あなたもGplden rod(セイタカアワダチソウ)が好きなんですか?私も毎年、冬になるとこの花の枯れた状態を写真に撮るんです。」とコメントすると、彼女も枯れたセイタカアワダチソウが好きだと言った。
おそるおそるの英語のやりとり。ネットというものがあるおかげで、彼女はきょうはどんなイメージを求めているのかを知ることができ、沈黙のなかで、お互いに静かに交信することができる。
ジェニファの撮ったセルフポートレート。彼女はベッドの横に座っている。ベッドの上には真っ黒い影がのっかっている。彼女が歩く街には、黒い無数の影が立ち上がっている。
彼女は長年multiple sclerosis(多発性硬化症)と闘っているアーティストだ。
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