味戸ケイコ「夕暮れの少女」展 / 原宿裏通り
10月20日
味戸ケイコ「夕暮れの少女」展(10月29日まで)を見に、北青山のギャラリーハウスマヤへ。
この新作のひまわりと一緒の少女は、名作「ひぐれのひまわり」の絵を思い出す。

味戸ケイコさんの絵を少女の頃に見てから、ずっとその味戸さんの少女の世界と、無言の交信を繰り返しながら、行き来しているような感じだ。
味戸ケイコさんの魅力は、何と言っても鉛筆で描かれた微妙な光と、さびしいけれど、静かで豊かなもので満ちた空間だ。

下のススキの野原にぽつんといる女の子。地平線近くにほんの少しの柿色。夕暮れの不安で淋しい空に、すべて包まれてしまう感じがとても好きだ(撮影時、絵の右がわの空間に向かいの壁の額が映りこんでしまいました)。
下の絵は、女の子が空に近い岩山のてっぺんに座っている。まわりは雲の海だけれど、飛んでいるのはカモメ。
最近見たばかりの「ピクニック・アット・ハンギングロック」を思い出した。
幼稚園の頃から、私は野原でいつまでも草花を摘んだり、きれいな貝や石をさがして一日中拾ったり、夕焼けの雲が刻々と変化していくのをじっと見つめているのが大好きだった。
自由時間があれば、絵を描いているか、本を読んでいるかが好きで、お遊戯や、みんなで元気に校庭で遊びなさい、と言われるのが苦痛だった。
なにかを夢中で見ていたり、雨や風や波の音、鳥の声を聞いていたりするのが好きな子なら、味戸ケイコさんの世界はとてもはいりこめて、安心できる世界だと思う。
味戸ケイコさんと。
味戸さんは、私が子どもの頃からずっと味戸さんの絵が好きだったことを、とても喜んでくださる。
私が『白樺のテーブル』の女の子の顔が一番好きです、と言ったら、「あの絵、怖いって言われるの。」と。「全然。あの絵は特に髪の毛の表現がすごく繊細で、きれいで、大好きです。」と言うと、「あれを怖いって言う人がいるのよね。怖いとは思わないのは、やっぱり福山さんは私と似てるのよね。」と言われた。
下の絵。この絵を「怖い」と言う人がいることが、私には驚きだが、そんな人もいるのだろうか。味戸さんの絵は、最近よくあるような、あからさまにホラー的なものを見せつける絵ではまったくない。

『白樺のテーブル』(安房直子/作 味戸ケイコ/ 絵)は偕成社より復刊されています。素晴らしい本なので、皆さん、ぜひ買ってください。
楳図かずおさんの『おろち』の小学館漫画文庫の味戸さんのカヴァー画の話、まんがの話など。私が『おろち』が大好きで、ストーリーやセリフをほとんど覚えていることに驚いてらした。
味戸さんの住んでらっしゃるところは山の斜面で、近くに秋草が咲き乱れる野原はいっぱいあるそうだ。最近、山百合の球根を鹿が掘り返して食べてしまったそう。
味戸さんも私も青梅街道のすぐそばに住んでいる、青梅街道は山のほうから新宿のほうまでずっとつながっている、という話。
新聞に映画「悪童日記」についてのインタヴューが載ったが、記者の編集により、自分が大切に思っている部分ではなく、どうでもいい部分を掲載されてしまった、という話。
絵描きにとって、自分の絵を大切にしてくれる人がいることがなによりも嬉しい、という話。自分の絵に興味を持って見てくれる人、好きになって、買って、手元においてくれる人。
絵には、絵を生み出すための困難、悩みや迷いの時間、じっと待機しなければならない時間、静かに集中する時間、それ以前の身体の記憶、大切な人や動物や植物やものとの深い関わりや思いなど、それに関わるすべてのものが含まれる。
そのことが理解できない人、他人の作品がどういうものか想像できず、他人の作品をぞんざいに扱ったり、ファンと言いながら、相手の貴重な時間も、相手の神経も、尊重しないで滅茶苦茶にしてしまう人がいる、という話。私もさんざんいやな思いはしてきたが、味戸さんにもそういうことがあったのだなあ、と、非常に共感した。
久しぶりに味戸さんとたくさんお話できて嬉しかった。
・・・
帰りに友人Oと外苑西通りから原宿まで散歩。
都会の真ん中にありながら昔ながらの都営住宅の雰囲気がとても素敵だった霞ヶ丘アパートはどうなったか見てみた。すっかり工事の柵に覆われ、かつて素晴らしかった植物たちはもう失われていた。
柵の外側から、この廃墟を見るだけで、私はかつて西新宿にあった都営角筈アパートや、南阿佐ヶ谷にあった阿佐ヶ谷住宅の記憶で胸がいっぱいになってしまうのだ。
私が通った小学校のすぐ裏にあった角筈アパートには、同級生の友達が何人もいた。罌粟やダリアや向日葵、雛菊、オイランソウ、色とりどりの植物が咲き乱れていた。
阿佐ヶ谷住宅は、こういうアパートに加え、前川國男が設計した、たくさんの低いテラスハウスが曲がりくねった道に配置され、李、梨、枇杷、蜜柑、柘榴など実の生る樹や、桜、ミモザ、野薔薇、紫陽花、芙蓉、カンナ、葉鶏頭、白粉花、彼岸花、蕗、白詰草、モジズリ、春女苑など、植物の迷宮だった。
ビクタースタジオの前を通って、裏道を一周。
「リカリスイ」っていったいなんだろう?不思議な看板を発見。飲み屋さんのようだが、かなりマイペースな雰囲気。細い柳も素敵。

神宮前の裏通りの商店街は、なんとなく高円寺に似ているような、古い木の家と変なお店がいくつかあった。
キラー通り、原宿通り、少し道に迷いながらアートスクール表参道の建物をさがし、Mさんの彫金作品を見た。
キディランドの裏の曲がりくねった細い路地を散歩しながら、コンビニで買った鮭おにぎりとビール。
派手で大づくりな表参道の裏道には、意外にも植物でいっぱいの狭い路地や、古いアパートが残っていた。
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