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2019年12月26日 (木)

宇野昌磨、高橋大輔

https://chisako-fukuyama.jimdofree.com/

全日本フィギュアの印象と個人的感想のメモ。

宇野昌磨『Great Spirit』

地を揺るがすように太古から響く、強烈なくり返しのリズム。濁りと振動。痺れるような高揚感。

よくこんな曲を見つけてきたと思える、スポイルされていない独特のプリミティブな力強さ、熱さ、ある種の純粋さを感じさせる宇野昌磨選手にぴったりな曲。

わかりやすい意味によって編まれたストーリーではなく、その場の臨場感、すさまじく動的な躍動がなければ成立しないプログラム。

「大いなる魂」に全身を浸し、狂ったように踊らされる者となる。原初的な感応力と、燃えるような熱を発する身体が、この瞬間にその能力を試される。

詩人の吉増剛造さんが、ずいぶん前に送ってくださった『アメリカン・インディアン口承詩』(金関寿夫 2000年 平凡社ライブラリー)(今は「ネイティブ・アメリカン」という呼称のほうが定着)を読み返していた。

ネイティヴ・アメリカンの言語の種類は千以上にのぼるという。種族も500を超えるそうで、文化は多種多様を極める。南西部の部族と南東部の部族が出会っても言葉は通じない、という言語学者もいるそうだ。

しかし、「彼等の神話や世界観にあらわれた本質的な同質性は、どうしても否定できない。」

文字をもたない彼らの言葉。発声。リズム。呪術的な響き。立ちのぼるいのち。

ゲイリー・スナイダーの言葉、「コヨーテの声は地霊の声だと信じてるんだよ。」

地霊の声に突き動かされるように、宇野昌磨は激しく魅力的に舞った。

・・・

宇野昌磨『Dancing On My Own』

最初に聞いた時は、ちょっときれいに流れすぎてとっかかりがないというのか、印象が弱い曲だと感じて心配だった。私がフィギュアで見たいのは、濁りや激しさ、不穏さのある強い曲だ。

しかし全日本の滑りを見た時の印象は、最初に聞いた時とはまるで違っていた。

今期、苦しみぬいた後にようやく訪れた眩しく暖かい恢復の光とともに、「悩みが多すぎて、うんと苦しんでボロボロになったけれど、それでも僕は踊り(滑り)続けるよ」と語りかけている曲に聞こえた。

「僕はずっと滑り続けるよ。何があっても・・」と、くり返し聞こえて、思わず涙。

・・・・・

高橋大輔『The Phoenix』

シングルのラストステージに、よくぞここまで体力を使う難しいプログラムを。

しんみりしっとりする曲ではなく、激しく攻める曲を選んでくれた、その心意気にほれぼれする。

だがいつでも彼は、ラストでありファーストであるようなステージで、この曲のタイトル通り火の中からの復活に賭けてきたのに違いない。

怪我による不調もあったろうに、心身のすべてを捧げて、極限の演技を見せてくれたと思う。ただただありがたい。

演技後のインタヴューにも高橋選手の真摯でシャイで温かい人柄が、すべて出ていた。

『Pale Green Ghosts』

妖艶であり、また不気味でさえあるだろう、音楽はまるで彼だけのために今流れるようだ。

氷上を一人で踊る高橋と二重写しとなって多くの亡霊たち(Ghosts)が戻ってくる。

今まで、ありとあらゆる感情の体験とともに、めくるめくイメージや色彩を見せてくれた高橋大輔選手。

猛烈な嵐に翻弄される小船のように狂おしく舞ったかと思えば、張りつめた冬の空に枝を広げる樹木のように静かに震え、次に顔をあげたときには燃えさかる火のように誘惑的で・・・。

日本人で、これだけ豊かな個性を持ったスケーターは二度と出ないだろう。

最後は、振付師が新しく振り付けたポーズではなく、やはり彼は手を天に精一杯伸ばしていた。

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伸び盛りの若手の瑞々しい演技もあり、今年の全日本はとてもどきどきして心に残る大会だった。

 

 

 

 

 

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