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2023年11月

2023年11月26日 (日)

宇野昌磨 2023NHK杯

宇野昌磨、NHK杯の個人的感想。

宇野昌磨は今季の目標として「自己満足」と言った。
自己満足というのは他人の評価を気にしないという意味を含むので、たぶん言葉の的確な用い方としては違うのだろう。

ジャンプの難度ばかりが評価されるのではない、自分の内側で出会われる未知の身体がまずは自分を感動させること、
それと同時に、それが他者の心を強く揺さぶる表現となって顕れること、

これから先のフィギュアスケートのありかたとして、卓越した表現が評価されるようであってほしい、という願いのこもった言葉だと思う。

SPもFPもあえて静謐な曲を選び、音楽が駆り立てる情動の助けを借りず、
ひんやりした透明な空気の中にすべての動きを際立たせ、強烈に焼き付けるという挑戦。

フィギュアスケートの真髄としての、スポーツでありながらの詩、
宇野昌磨選手はそのレヴェルにまで到達したのだとしか思えない。

それほど彼の表現はひとり隔絶していた。


SP映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』より

湖の面に白い靄が立ち籠めるような冷気。

異語(グロソラリア)のように、アイラビュ、アイラビュという意味のわからない誰かの囁きは反響し、温かい息は白く凍りながら光る。

誰もいない静けさの中で激しく大きく躍動するステップ。

この世ならぬ光を受けて、靄と息が無数の煌く粒を散らす。

明らかに中国杯の時よりも大きく速く明確な動き。

見る者を黙らせる彼だけの表現の世界。

 

FP『Timelapse』 ~ アルヴォ・ペルト(作曲)『鏡の中の鏡』

構成を変えて来たことからも、芸術性を高めるだけでなく、本気で勝ちに来たことに胸が高鳴った。

始まる前のまっすぐな眼。不安でも緊張でもなく、ただこの瞬間に集中した表情。

音楽が始まり、静けさのなかで彼の気持ちがさざめき、沸き立つのがわかる。

きれいな4Lo。

抑制されながらもなめらかで華麗な動き。
4F。
3A.
3A-2A。
冷静なリカバリー・・

後半のアルヴォ・ペルトの楽曲はさらに静謐で張りつめた空気の3拍子。

沈黙や静寂そのものであり、激しさでもある。

鏡の中の鏡には自我が消えたフィギュアスケートの真髄だけが映し出されるように。

彼だけの身体表現の極致。

終わった時の「やった!」という笑顔。シュテファンコーチの高い歓声。
満足したシュテファンコーチに抱きしめられ安堵の表情。
キスクラに座った時の3人で手のひらを合わせて喜び合う仕草。

すべてが祝福に満ち、200点越えでの3連覇かと思った。

が、そうではなくて、なんともやるせない結果となった。
誰よりも高難度のことをやっていて、ジャンプも美しく(大きな乱れも転倒もなく)、他の選手とは明らかに次元の違う技と表現の両立、
それが点数としては評価されない。

浅田真央選手の『鐘』の時を思い出して辛い気持ちになった。
以前なら大きな加点がついていたジャンプが、急に加点ゼロになる理不尽さ。

本人が
「言えることは今日のジャンプ以上を練習でもできる気がしない。」と言っているのだから、なんらミスはしていないのだろう。

「やってきたことを体現出来た良い試合だったと思いますし、僕の過去を見てもこのような良い演技っていうのは数数えられるくらいしかないって演技をできたと僕は思う」

私も最高の演技だと思った。だから悲しい。

宇野昌磨選手は自己保身や自己愛のために何かを言う人ではない。

判定している側からの、フィギュアスケート競技のありかたとして目指す方向性と、判定結果の明確な説明がほしいところだ。

彼が「ジャンプだけではなくもっと表現を」「まず自分が満足して、見る人も感動する演技」と言ったことが実現されたはずなのに、

今回の結果としてはまったく逆に、ジャンプ(の飛び方、降り方)ばかりが厳密に(?)ジャッジされたことが本当に残念でならない。

 

 

 

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2023年11月22日 (水)

サイバーナイフの中止(機械の穴が7mm)

11月22日(水)

高円寺放送(高円寺の商店街のスピーカーから流れている放送)で、最近やたらに懐かしいマイナーな名曲が流れている。

びっくりしたのは、今日、中山ラビさんの「そもそも」(「ラビ もうすぐ」1976)が流れていたことだ。

先日は「ひらひら」がかかっていた。

布の袋の中でくつろくチョッピ―。
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11月21日(火)

個展の少し前、10月17日に脳のMRI検査で右脳の上側に2mmほどの転移が発見された。

きょうはその腫瘍が大きくなっているかを見るため、もう一度MRI検査を受けた。

13時にMRIを受け、14:30頃に放射線科のS町先生に診断を受ける。

結果は3mm。前回より1mmくらいの増大。

血液検査でサイログロブリン(甲状腺刺激ホルモン)の値が上がっていないのであれば、急いでサイバーナイフを受ける必要もないが、

どうするか聞かれて、いつかはまたサイバーナイフを受けなければならないのであれば、早い方がいい、とお返事した。

その後、いったん頭頸科のY本先生の診断を受ける。

「顔を見たかったので(診察を入れておいた)」とY本先生。

脳の新しい転移について、Y本先生には「ほっておいていいのではないか」と言われた。

右肺の中葉切除した後に発見されたので、まさか甲状腺癌と関係な腫瘍だったら怖い、とY本先生に尋ねると、甲状腺癌の転移であることはほぼ間違いなく、眼に見えなかった腫瘍が遅れて現れてくることもあるそう。

再びS町先生の診察室に戻り、早くにやってしまうのであれば、本日これからサイバーナイフのための脳CTを撮り、さらに頭部固定用のお面を作ると言われ、

ではお願いします、と応えてCT室に呼ばれるのを待っていた。

CT室に呼ばれて入ると、ベテランの技師さんに「腫瘍が小さすぎるんですよ。今、先生を呼んでますから。」と言われ、

「???」・・・しばらくしてS町先生が現れ、

「放射線が出る穴の直径が7mmなんですって。だから腫瘍のほうが小さすぎるから、まだやらないほうが・・」

「えっ!それなら絶対やらないほうがいいですね。悪くない部分まで破壊されちゃうから」

サイバーナイフは1mmくらいの細い放射線なのかと思っていたらそうでもないらしい。

会計が混んでいてずっと待っていたが、ずいぶんしてから窓口に呼ばれ、「血液検査が済んでません」と言われる。

「きょうは中止になったんです」と応えたが、会計の係の人がS町先生に電話で確認して、血液検査を受けるように言われてしまった。

もう血液検査の待合室は真っ暗。主任らしき人がひとり待っていてくれて、血液4本採取される。

それからもう一度会計のやりなおし。

MRI撮影のため朝から絶食していたので疲れてしまい、院内のコンビニでおにぎりを買って食べた。

結局、すべて終わったら5時半になってしまった。

11月19日(土)

原宿で見つけた素晴らしい廃屋。
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ドーナツ屋への長蛇の列を「すみません」と横切って建物の裏へ。

蔦の絡まる廃屋を見ようとする人はひとりもいない。

私はひとり大興奮。ここで撮影ができたらいいのに~。

 

 

 

 

 

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2023年11月13日 (月)

篠原さんと打ち上げの乾杯

11月9日(木)

足利市立美術館の篠原さんが東京出張のお仕事が早めに終わり、一緒に個展の祝杯をあげてくれた。

篠原さんは15年も外苑前(東京の中でも都心)のギャラリーを切り盛りし、カメラマンの仕事もし、美術評の文章も書き、それから市立美術館の学芸員になったかたなので、とにかく美術展示のプロフェッショナルだ。

私が一番聞きたいこと、作家としての悩みに、ズバズバというか、明確に応えてくれる。

そういうアイディア(挑戦)はは意味があるからやってみたほうがいい、とか、人間関係で悩んでもプラスにならない人はすっぱり忘れたほうがいい、とか。

最初にやろうかと思った新高円寺の商店街にあるギャラリーでやらなくて本当によかった、と。

作家(私)と私のお客様に明らかに不利益や迷惑になることを、「それがうちのやりかただから」と平気で通そうとするギャラリーに対しては、「ギャラリストじゃないね」ときっぱり言い切った。

「そんなところで展示は不可能だ」と。「(絡んでくるほうがおかしいから)そういう人は忘れようか」と。

結果的に、今回やったギャラリー工の濱田さんはすごくよいギャラリストだった、本当に良かったね、と言われた。

すべてが本当に篠原さんの経験からくる答えで、公平で的確に、作家としての向上のために言ってくれているとわかるから信頼できる。

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最初にお寿司をたくさん注文した時に撮り忘れた。

この日は日本酒を4種類くらい飲んだ。

個展の数日前から疲れと緊張で胃腸を壊してしまい、個展中も毎朝、胃の薬ランソプラゾールと下痢止めロペミンを飲んでいたのだが、今日くらいからやっと食べられるようになってほっとした。

11月12日(日)

寒いのでふとんに入って頭だけ出しているプフたん。
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2023年11月11日 (土)

沢渡朔さんのためのロケハン / 額

11月8日(水)

沢渡朔さんが追加で私を撮りたいと言ってくださったので、蔓草の絡まる場所を探してロケハンに行った。

昔、私がドイツ人のシュテファンをモデルに写真を撮った場所。

まだ存在しているか心配だったが、少しずつ変容しつつ確かにそこにあった。

 土手の上から沼の上に翡翠(カワセミ)の青緑色が煌くのが見えた。翡翠は沼の縁と沼の中ほどの東独の上を行ったり来たりしていた。

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朱や黄に色づいてきたウルシやヌルデと、鋭い針坊主になりかけのアメリカセンダングサを避けながら藪の中を歩く。

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道なき道を行き、私の好きな枯れ蔓が絡まる場所を発見する。

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出版社のMさんと打ち合わせしてから来年3月くらいに撮ると言われているけれど、私はその頃元気でいられるのだろうか?

11月5日(日)

ご購入いただいた絵を保護するための額縁を見に行く。

私が最も気に入っている一番シンプルで安い額は、受注生産で、出来上がるまでに2,3か月かかると言われた。

 

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2023年11月 9日 (木)

花輪和一さんと高円寺を散歩

11月4日(土)

花輪さんが昼過ぎに新高円寺に来てくれて、高円寺北のほうまで散歩した。

まず、私がものすごく喜んだことがあった。

昨日、東京で再会した時から、花輪和一は煙草をやめて(やめることができて)いたのだ。

ギャラリー工の玄関脇のヒイラギにセミの抜け殻を4つ発見して、私は花輪さんが見たら喜ぶと思って知らせるのを楽しみにしていた。

花輪さんに見せると「まだあるんだ~」と喜んで、すぐに近所のコンビニにプラスチック瓶の牛乳を買いに行き、その容器を洗って抜け殻を丁寧に採取していた。

その時、いつもならここで喫煙タイムになる、と思ったのに花輪さんは煙草を吸わなかった。

私が送った禁煙ガムを小さくちぎって何度にも分けて噛んでいた。

「偉い!あんなに禁煙できなかったのに、ついにできたんだね~すごい!これで新幹線にも安心して乗れるね」

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「絶対に顔のせちゃだめ~」と言われたので顔を隠しました。(画像の無断転載をお断りします)

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高円寺茶房で花輪さんはコーヒーがおいしいとおかわりしていた。

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階段の錆が美しい古いアパートの前で。

高円寺をぶらぶらあてもなく歩きながら、昨日の私の個展の感想をいただいた。

「長い時間、黙ってじっといつまでも絵を見ている人たちがいたでしょ。それがすごいことだと思った。」と言われた。

「それと、ここが○○にも見える、とか言ってた人がいたでしょ。私もそういう深みのある絵を描きたいと思った。偶然のしみとか、はねとか」

「え・・と・・ずっと前から私言ってたよね。何もかもを細かく描き込みすぎないで、抜くところを作って含みを持たせたほうがいいって。そのほうがいいでしょ。もう眼も疲れるし」

「そうでした」

立ち寿司横丁で(座って)スパークリングワインで乾杯。

おなかいっぱいお寿司を食べてで二人で3500円くらいだった。「札幌の狸小路だと安いところでもひとり4000円くらいでしょ?どう?東京の安いお寿司の味は」と尋ねると

「すごく安いね。それにおいしい」

「私一人で食べると750円くらいでおなかいっぱいなんだよね」

「へたするとコンビニ弁当よりも安くお寿司が食べられちゃうんだね」

明日の朝、上野から函館行の新幹線で帰るという。「ちゃんと起きられるか心配~」と言ったら「各部屋に目覚まし時計がついてるからだいじょうぶですよ」と。

花輪さんはサウナが好きなのだが、脱水にならないのかな、とかいろいろ心配してしまう。

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2023年11月 8日 (水)

GALLERY工での個展の記録 10日目、最終日(11月3日)

11月3日(金)

今日は音楽評論などをされている堀内宏公さん。

そして母の介護の時にとてもお世話になった当時のケアマネさんのMさんが見えて本当に感激。ずっと気になっていたのだか勤務先などに個展のご案内を出したらご迷惑だと思い、遠慮していた。

西新宿の古いボロボロの木造の家(まだ存在している)の中に入って、あの頃の悩み、苦しみに寄り添って助けてくれたかた。

創画展のKさん。

ついこの前の卓球教室でご一緒したO原さん(すごく上手な人)。

高校の部活の先輩Aさん。

いつもメールでお話してくださって、私の絵を買ってくださってもいるTさん(わざわざ仙台から来てくださった)。

写真家の堀田展造さん。

漫画家の月城マリさん。このかたは明るくて優しくて、すごく励まされる。

小平市のムサ美の近くに実家があるのに、多摩美の彫刻科を出て高知の農園などで働いているという若いMさん。

私のブログを読んでくださっていると言われて「なぜ?」と聞いたら「だって福山さんてすごく一生懸命じゃないですか}と言われて、若い人にそんなふうに言ってもらえるとは思わなかったのですごく驚いた。

彼は今日、素人の乱のまぬけハウスに泊まると言った(受付前のソファなら1000円で泊まれるという)。

Twitterで見て来てくださったタケイミナコさん。とてもおしゃれなアールデコのイラストのワンピースをお召しになっていて素敵だった。西荻の古着屋で買われたという。

荻窪の古書店のNさんのTwitter仲間のSさん。黙ってじっと絵と対峙してくださった。

鵜飼哲さんが二度目にご来訪くださる。「花輪さんらしき人が新高円寺駅前で迷っていましたが、ひとりで行きたそうだったので」と聞いて飛び出す。

五日市街道の始点の交差点で大きく手を振って、向こう側にいる花輪和一さんを迎える。

私の初個展からずっと応援してくださっているT子さん。

昨年もコスモスと猫の絵を買ってくださったのだが「今年もコスモスシリーズがほしい」と。
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音大声楽科を出たS君。彼が学生の頃に知り合って、もう36歳と聞いて驚く。

独り立ちして仕事をがんばっているI君。彼も学生の頃に知り合ってもう31歳。

最後の片付けをオーナーの濱田始さん、鵜飼哲さん、花輪和一さん、T子さんに手伝っていただいてしまった。

やっとこさカーゴ便に乗せて送り、4人でお疲れ様~の乾杯。鵜飼哲さんと花輪和一さんが一緒にテーブルを囲んでいる貴重で珍しいひととき。
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本当に皆様、最後の最後までお世話になり、ありがとうございました。

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食べ物を片付けたあとに、花輪さんが北海道の自宅の裏山から大切に持って来てくれたおみやげ、黄色くなったミズナラやコナラの葉っぱを出してくれる。「東京はまだ黄葉してないって思ったからさ~」と。
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大きくて茶色いのはホウの葉。ツルウメモドキの鮮やかな実も。

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私は家に荷物を置いてから花輪さんを新宿区役所前のカプセルホテルまで送って行った。

ここ2週間くらいずっと気を張りつめていたので疲労困憊で、地下道から地上に出たら、見慣れた新宿の街がギラギラして、一瞬、どこに区役所があるのかわからなかった。

本当にいろんなかたに会えて、絵を見ていただいて、お話しできて、とてもとても幸せでした。

来てくださったかたがたに心より感謝いたします。



 

 

 

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2023年11月 7日 (火)

GALLERY工での個展の記録 9日目(11月2日)

11月2日(木)

12時オープンの少し前に着いたら、中で味戸ケイコさんが待っていてくださって大感激。今日もいきなり泣きそうになる。

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私が少女の頃、味戸ケイコさんの絵が掲載された本を見ることができたこと、その当時はもちろん、それから年月を経ても少しずつでもそれらを集めることができたことが、どれほど今の私を支えていてくれるかしれない。

味戸さんの画集と一番好きな絵本『あの子が見える』を用意してお話ししていただいた。

味戸さんはご自分の絵を暗いとおっしゃったりするのだが、私はそう感じたことは一度もない。

「前にもそう言ってくれたわね。」

「はい。全然暗いとは感じなくて、むしろ感覚的にすごくしっくりと共感出来て、限りなく温かい闇とか。靄とか、霧とか・・。」

「私も霧や靄が好き。雨の日とか。」

「そう!私もカンカン照りは苦手で雨の日が好きです。植物が濡れて、雫がこぼれたり風に散ったり。」

味戸ケイコさんは本当に鉛筆の感触を大切に描かれていて、そのタッチにすごい深みと陰影と、すぐ近くに在るのによくわからない、見えそうで見えないけれど確かなものが激しく顕われていて。

自分が死んだときに絵がどうなってしまうのか、廃棄されるのが虚しくて怖くて、大きな作品を作れなくなったりした、とお話したら

「自分が死んだあとは誰かが考えてくれるのよ。それは本人は気にしないでどんどん描いていいのよ。私も今あるものを函館の美術館が収蔵してくれることになったり、そういうのは決まる時は急にとんとんと決まるのよ。なるべくひとつのところに収蔵してもらったほうがいいとは思うけど。大切な作品が誰かに買ってもらって散っていても、それはその人が大切にしてくれるんだし。生活のためだったんだからそれもいいのよ」と言われた。

味戸さんはJR高円寺駅からお帰りになるというので途中までお送りした。私の好きな古着屋Ivy Storeで2900円の明るいベージュのニットワンピースを見つけて、「これすごくきれいだし、安いわ~。いいわね」

雑貨屋MALTOでは「こういうのひとつ買ったら限りなく買っちゃいそうになるわね」と。

平凡社の「太陽」などの編集長だった清水壽明さん。
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画集の時にお世話になったカメラマンの糸井康友さん。

そしてミュージシャンの斉藤哲夫さん。ずっと前に個展に来てくださった時は、介護施設のバスの運転手をされていたり、お父様の介護をされていたり。それから私も両親の介護があり。哲夫さんは2度も脳梗塞になられたり。

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そんなこんなで本当に久しぶりの再会。住所がわからなくなって昨年の個展のご案内は事務所に出した。そのハガキを持って哲夫さんは吉祥寺のギャラリーまで来てくれようとしたのに、場所を間違えて会えなかったと知ってびっくり。

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「グッドタイムミュージック」を途中まで歌ってくださり、私もハモった。

「はい、ここから先はギャラが発生します(笑)。なんてのは嘘だけどさ。ちゃんと練習してないからできないや。この前のエンケンの追悼コンサートの時は、つわものぞろいだったからすごく練習したからね。」

「遠藤賢司さん、本当に優しくて。個展にも来てくれたし、私が出したアネモネの絵を描いたはがきに「美しいなあ~ずっと机の上に飾ってるよ」って言ってくれて」と言ったら「今度、エンケンのうちに一緒に行こうか。素敵な木の家だよ。」と。

斉藤哲夫さん、ぜんぜん変わっていない。気取りが無くて正直で温かい。

JRの駅の方から帰ると言われたので送って行った。

「古着屋好きで、高円寺によく来るのよ。でもこっち(新高円寺駅のほう)までは来たことなかったなあ」

私の好きな古着屋を紹介しながら歩いた。花輪和一さんに興味があると言うので、歩きながら彼の話をしたり。

高円寺パル商店街にて。
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そのほかもたくさんのお客様がお見えになった。

新聞社のMさん。お忙しいかたなので初めてお会いできたが、とても謙虚で優しいかた。

 

昨年の個展で猫の絵を買ってくださったYさん。大学で仏文を学ばれたそうだが、メールの文章を読んだだけでも、そうとうの教養と思慮のあるかたとわかる。

そのYさんが大きなアネモネの絵をじっと見ていてくださって、

「今、京都のお寺なんかで若い日本画家に襖絵を描かせたりしてるらしいんですけど、みんな絵が軽い。私は今、若冲に匹敵する人は福山さんしかいないと思っています」と言われて、本当に胸がずきゅーんと打たれるように感激した。

Yさんは2点を選んですごく迷われて、最後に「古い本」という絵をご購入くださった。お父様の思い出に添うように。

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2023年11月 6日 (月)

GALLERY工での個展の記録 8日目(11月1日)

11月1日(水)

今日は一番に、フリーの編集者のM子さんがいらしてくれて感激。とても久しぶりにお会いできた。ずっとお話ししたかった人。

M子さんは本当に真摯でていねいで心の通じるかた。

昔、図書新聞で私と稲川方人さんとの対談をやってくれたかたでもある。

M子さんは長くギャラリーにいてくださって(涙)、この絵を買ってくださった。「鬱金香」(チューリップの和名です)
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それから高校時代の部活時の大先輩、K田さん。私は美術系ではなく音楽系の部活で、K田さんには音階のことなどいろいろ教わった楽しい思い出が。

S出版のS原さん。彼は浩瀚な『舞踏大全』を持っていたり、現代音楽にも詳しい芸術好きなかた。

 

そして筑摩書房の大山悦子さんが、出来上がったばかりのちくま学芸文庫『動物を追う、ゆえに私は(動物で)ある』(ジャック・デリダ著、鵜飼哲訳)を持って来てくれました!

この本の巻末に私のエッセイが載っています。学者ではない私が、デリダが最期に訴えていたことに応鳴(鳴き声で応答)したものです。

ついに、ついに出来上がった!と大山さんと乾杯。デリダの奥様が亡くなり・・・いろいろあって3年くらい、どうなるんだろうとずっと心配していましたが、ついに!

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そしてやはり何年も遠く離れて会えていなかったNちゃん。血はつながらないけど私の実の妹のような人。新幹線で日帰りで来てくれた。まわりにお客様がいなかったら私は号泣していた。

彼女が欲しいといってくれた絵たち。連作「薔薇の散策」

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「薔薇の触手」
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今日も個人的には嬉しくてありがたくて泣き崩れてしまいそうなことがたくさんあって、私は自分を冷静に保つのに必死だった。

見に来てくださったすべてのお客様に感謝です。

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GALLERY工での個展の記録 7日目(10月31日)

10月31日(火)

今日1番は、我が家のプフが保護されたばかりの時(当時の名前はユキ)に預かっていてくださったT木さん。

あの時、うちにはちゅびとチョッピーという真菌感染した赤ちゃんが2匹、隔離して必死に治療中で、3匹目を迎えることができなかった。

2匹の真菌がやっとこさ治り、あわやほかのうちにもらわれそうになったプフを(そのお宅のおじいさまが反対したおかげで)、もらい受けることができて幸せだった。

そしてなんと高校1年の時の担任のA井先生が現れて絶句。もう高校の名簿も紛失してしまっていたのだが、私の映画の時にいらしてくださっていたらしく、その時のメモが発見されてご案内を出して奇跡の再会。
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なぜか恐ろしいほどお変わりなく、背筋まっすぐで白髪もなくてびっくり。先生からも「そちらも変わってないじゃないか」と言われた。

足利市立美術館の私の展示を見に行ってくださったA子ちゃんのお姉さま。

卓球の友人のU田さん。S井さん。

水墨画家の新倉章子さん。
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新倉さんのように高度の技術を持っているかたに、意外にも私があまり自信がない作品をほめられて驚く。作者のわからないところに、見る側が何かを感じてくださる。

作者の意図を超えた偶然の色、かすれ、傷、錆、歪みのようなものに感応してくださるかたがいてくださることが幸せと思う。

 

そして山梨県の白州に住んでいるデザイナーのカズミさん(私の『反絵、触れる、けだもののフラボン』と『花裂ける、廃絵逆めぐり』のエディトリアルデザインをしてくれた古くからの友人)が来てくれたので本当にびっくり!

カズミさんは足などの血管に炎症が起きる難病なので、遠出は慎重にされている。何十年ぶりかに東京に出て来たという。しかもひとりで。

カズミさんは水彩の「薔薇の散策2」を選んでくださった。

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荻窪の古書店のNさんは、再びいらして何度も吟味された結果、この「秋野」をお買い上げくださった。
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私の大好きな卓球のM原先生。82歳になられるよき指導者。先生のお父様も油絵の画家で、昔、山で亡くなられたそうだ。
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水声社の編集長で私の『花裂ける、廃絵逆めぐり』に辛抱強く関わってくださった飛田陽子さん(一緒に写真を撮るのを忘れて残念)。

英文学者の佐藤亨さん。

画家の高須賀優さん。

歌人の天草季紅さん。

足利市立美術館まで見に来てくださったダンサーの藤本美喜子さんとご主人。私のブログと本『反絵、触れる、けだもののフラボン』を読んだのが先で、そのあとに絵を知って、絵を好きになってくださったそうだ。
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2023年11月 5日 (日)

GALLERY工での個展の記録 6日目(10月30日)

10月30日(月)

今日は一番に鎌倉ドローイングギャラリーの瀧口眞一さんが来られてびっくり。個展が始まる数日前にあたふたと画集とともにご案内を差し上げたので、いらしてくださるとは思わなかった。

今までの経歴をまとめたファイルを見られて、イタリアのフェア、ドキュメンタリー(?)映画、台湾花王の洗剤パッケージの花のイラスト、詩の本の装丁など「いろいろなことをされているんですね。」と言ってくださった。

そして午後1時に沢渡朔さんとアシスタントの塩原さんが来られて興奮。

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沢渡さんに撮っていただいた写真の展示のしかたが気に入っていただけるのか緊張していたが、「いいよ!写真の展示もいい!絵の展示もいい!」と言ってくださって「わあーい!」と跳ね上がった。

「写真の展示は足利市立美術館の篠原さんがやってくださったんですよ。」

「絵もいいよ~。すごく(値段が)安いね。銀座だったらこの何倍もする。銀座でやったら売れるんじゃない?10日じゃもったいないね、3か月くらいはやりたいね。」

沢渡さんが撮って下さった写真と私の絵を一冊の本にまとめる打ち合わせで来られたのだが、デザイナーのMさんが来られなかった。沢渡さんがMさんに電話すると、お父様が亡くなられたとのこと。

「本にするには写真の数が足りないんで、Mさんに、このギャラリーで、絵の前で(私を)スナップみたいに撮ったらどうかって言われたんだけど、俺は絶対それは嫌だって言ったのよ。撮るんならば作品にしたいって。」と沢渡さんに言われて痺れた。

「もう一度、ああいう枯れ蔓が繁茂するような場所で来春にでも撮ろうか」と言われ、もうあの廃墟には入れないだろうな、と思い、

「ああ、ありました!一カ所だけ。多摩のバードサンクチュアリが。」と、昔、私がシュテファン(『デッサンの基本』の折にモデルを探して、高円寺の通りで声をかけたドイツ人留学生)を撮った場所を思い出して提案した。

しかし数年前の台風で多摩川の中洲も流されて破壊されているかもしれず、個展が終わったらさっそくロケハンに行こうと思う。

「人から見られないようなところで、枯れ蔓や樹々の中でヌードを撮りたい」と言われ、ええ~!?いや、もうさすがに、それはちょっと・・・無理じゃないかと思うが?

20年近く前には「俺は女性を撮りたいんだ。脱がなくっていいんだ。笑わなくっていいんだ。」と言われ、ものすごく感動したが、本当に脱ぐことになるなら、現実問題として、その頃ならまだしもだったと思う。

しかし沢渡さんがそう言われるからには、何かお考えがあるのかもしれない。

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斜め上に4枚連続でせり上がっていくように(足利市立美術館の篠原さんの構成により)展示されたのが、今年5月、右肺中葉を摘出した傷を沢渡朔さんに撮っていただいた写真。

肺切除する人の参考になるかもしれないので・・・下の写真は今年、3月24日に国立がんセンター中央病院で右肺中葉を摘出した手術の痕です。
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撮影したのは5月17日。沢渡朔事務所の中の壁の前で。この頃はまだ傷が少し痛かった。(傷が小さいほど神経が残っているので痛いと執刀医に言われています)

私は肺癌ではなくて甲状腺癌からの両肺の粟粒状転移を長年保持していて、その右肺の粟粒の一部が今年になって急に大きくなり、急遽、手術したものです。(詳しくは3月、4月のブログをお読みください)


 そのあと卓球仲間のYさんが吟醸酒を持って来てくれる。(その場では飲んでいないけど、いつか一緒に飲みたい)

詩人の中本道代さんがいらして、いろんな詩人についてお話する。中本さんは真摯に正直にお話してくださる。

今村純子さんが女子美で教えた帰りにまた寄ってくださる。私に会えたことが「恩寵」だとも言ってくださって。

美術家の平田星司さんが来てくださって「丹生谷貴志さんのブログで私の名前を見たから」と。平田さんは私と同じ赤いヘルプマークの札をかばんにつけておられる。

平田さんは今日初めて知った方だが、篠原さんともお知り合いだそうで、帰宅して検索してみると静謐な作風に惹かれた。

 

 

 

 

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GALLERY工での個展の記録 5日目(10月29日)

10月29日(日)

最初は、つい最近卓球で知り合った若い友人。私がお菓子を食べないので日本酒を持って来てくださる。お酒を飲みそうにない若い方なのに恐縮。

そして水墨画家の渡辺友一さん。

Twitterで応援してくださるぼけっとふるねすさん。

近所の方々。

私が尊敬するフジヤ薬局の澄子さん。緑道側の窓から、中の私と大きく手を振りあって「来たわよ~!」「ありがとうございます~!」の合図。

高円寺が誇る100年超のお蔵の薬局の薬剤師さん。「あなたのためにとっておいたのよ。これかわいいでしょう?」と枝に並んだ小鳥の写真(新聞の切り抜き)をプレゼントしてくれたりする。
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澄子さんは薬学、植物に詳しくて、とてもたくさんの雑草の名前を知っているのだが「あなたほど雑草の名前を知っている人はいないわ」と私に言う。

これは11月4日に撮影したフジヤ薬局。小さく映っていますがモデルは私が敬愛する天才です。

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古書店勤務のNさんとTwitter仲間のMさん。熱心に見ていただいて感謝。

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個展の2日目に届いた五木玲子さんからのピンクの百合がどんどん開花してきて、建物の玄関まで甘い香りがたゆたっている。

五木玲子さんはちょっと暗くて強烈な花の絵を描かれていて、1999年の銀座の個展で「同じ感覚を持つ同志の出合いということで」とおっしゃって絵を買ってくださった。その絵は灰色の丘の風になびく白いコスモスの絵だった。

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五木玲子さんは小説家の五木寛之さんの奥様でもあります。

 

 

 

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2023年11月 4日 (土)

GALLERY工での個展の記録 4日目(10月28日)

10月28日(土)

きょうはX(Twitter)で知って下さったかたたちが何人かいらしてくださった。

歌手のカナさんがお友達を連れて来てくださる。カナさんは足利市立美術館にもお友達を連れて来てくださったかた。

高校時代のクラブの友人も。

そして「手術からずっと半年、こうして元気になられるのを待っていました」と言ってくださったMさん。Mさんはいつもご家族3人で来てくださる。

美大の先輩、下村貢さん。下村さんは院展の画家なので箔の扱いが荒い私の絵などお嫌いかと思ったら、「大きい3点がいいね」とほめてくださった。

箔を使ったたくさんの小さな作品に対しても、「今の美大の教え方は昔と全然違う。小さい作品をたくさん作って、いろいろ実験してみるように指導している。」と教えてくださった。

そして箔の錆止めの話をされた。「こういう話は作家どうしでなかなかしないけど・・・僕はパネルの裏からもやっている」と奥村土牛の作品をを例にとってスマホの画像で見せながら教えてくださった。

ベンチに座ってゆっくりお話ししてくださった。若い頃、というより今まで、ほとんどお話したことがないのに、今、この歳になって親身にお話してくださることに、すごくありがたいと同時に不思議でたまらない。

「下村先輩に100号のパネルを作っていただいたんですよ。」

「5000円で作ったんだよね。あの頃は猪木先生に「下村工務店儲かってるか?」なんて言われてたな。僕は工作や立体が得意だから。」

「学祭で、銅の板で作った薔薇の花のブローチを買いました。すごく素敵で、ずっと使っていました。あの頃の先輩は長髪で、ミック・ジャガーにそっくりで。」

「若い頃、よくみんなにミック・ジャガーに似てると言われてたよ。」と。

それからすごく久しぶりにやっと会えたサヤカちゃんとご主人のアキラさん。サヤカちゃんは昔から私の絵を好いてくれている人。やはり難病があるのだが、お元気そうで本当に嬉しかった。
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アキラさんは昔、うちの近所の善福寺川の釣り堀そばの植え込みで生まれていた野良の赤ちゃん猫のうち、一番弱くて病気で死にそうだった子を保護して育ててくれた。本当に愛情深い人。

杉並の卓球教室で知り合ったばかりのU木さん。すごく卓球がうまい人。自転車で久我山の方から来てくださった。

ギタリストの山口亮志さん。なんと九州に住む彼のおばさま、陶芸家の松崎芙美子さんが新聞に小さく載った私の個展記事を見て「この展示を見にいってらっしゃい」と、彼に言われたのだという。

早稲田大のフランス文学研究者、谷昌親さん。昔、早稲田での授業によんでくださったり、映画の時に対談してくださったり、とてもお世話になっている。

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今度、ちくま学芸文庫になるジャック・デリダ『動物を追う、ゆえに私は(動物で)ある』(鵜飼哲訳)に載った私のエッセイの内容について少しお話させていただいたり、質問させていただいたり。

6時に高校時代の同じクラスだった友人が二人で来てくれて、7時の閉廊まで待ってくれて新高円寺駅近くの居酒屋で夕食。

このふたりも高校時代はあまりしゃべったこともないのだけど(特に私は緘黙だったので)、最近になってfacebookで再開して、毎回、私の個展に来てくれて、精神的に支えてくれている友人。

もともと内向的な私にとって、facebookやTwitter、ブログがあることは、幸いなことかもしれないと思う。

 

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GALLERY工での個展の記録 3日目(10月27日)

10月27日(金)

今日の1番目のお客様は、近所(高円寺南)のギャラリー・ポルトリブレの平井勝正さん。

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それからX(Twitter)でもつながっていて応援してくださるOさん。

詩人の林浩平さん。

デザイナーの河井宣行さんと押山マサルさん。上野の都美術館を見てからいらしたそうで「「東京展」よりいいね。」と言ってくださった。

次に詩人の川端隆之さん。

Fさん、先日、ギャラリー工で展示をされた桃子さん。

詩人の紫衣さんもご友人と来られた。

川端さんとは何十年ぶりかに会えた。お元気そうでよかった。「薔薇の散策」シリーズのひとつをご購入くださった。夕食をご一緒した。

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川端隆之さんがご購入くださった「薔薇の散策4」。

 

 

 

 

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