大野一雄「美と力」上映会
8月30日(土)
ギャラリー十二社ハイデで大野一雄さんのVHS「美と力」の上映会。
土方巽演出の衝撃的な「ラ・アルヘンチーナ頌」(ジャン・ジュネの『花のノートルダム』のディヴィーヌ)・・・
大野さんが初めてアルヘンチーナの踊りを生で見てダンスをやろうと思ったという、希少な実際のアルヘンチーナの舞踊映像・・
明るく愛らしくふくよかで軽快に跳ね回るアルヘンチーナの踊りに感激し、
アルヘンチーナを頌える踊りとして、生と死のはざまの男老娼ディヴィーヌを踊る、その凄まじさ。
死にゆくことで生きるような、拈華微笑のような・・・とてつもない妖艶。
そして大野一雄さんの生い立ち、土方巽との「バラ色ダンス」など盛りだくさんの内容。
1時間見たところで、あまりのエネルギーに圧倒され「休憩していいですか」の声が上がる。
VHSなのでいつでも止めて休憩できるのです。
お茶とサンドイッチをとってしばし、だらける。
上映再開。そして後半50分。
「わたしのお母さん」。赤い朱塗りの御膳をお母さんに見立てる。これもすごいのだけど・・・
そして私もまだ生々しく覚えている1998年の「愛の夢」。
大野一雄先生の舞踏は何度も見に行っているので、場所ははっきり覚えていないが、テアトルフォンテ「わたしのお母さん」の舞台のラストで踊られたものだったのだろうか・・。
この時、大野さんは92歳。もっとも身体がドラマティックに動いていたように見え、まさに「愛の夢」に向かって駆けだすように、切なくも希望に満ちた笑顔を中空に向けて力強く舞ったのを私は間近で見たのだ。
すぐ近くに座っていた高橋睦郎さんが頬に幾筋もの涙を流しているのを見た。
名状しがたい激しい感動。
98年には「天道 地道」も見に行っている。
そしてこの年の10月には、私の銀座での個展にもいらしてくださって、絵の前で踊ってくださった。
画廊に電話があって、私が出ると「おーのです」と言われて、一瞬誰だろう?と思ったら「おーのです。今から踊りに行きます」と言われて仰天したのだった。

曲目は大野慶人さんが持ってらした小さなカセットデッキでかけられたマヘリヤ・ジャクソン「I believe」とエルヴィス・プレスリーの「愛さずにはいられない」。ただ号泣しかなかった。
画家だった大野一雄さんの叔父様の絵の資料をくださって、本当に感無量でした。
そう、その前に1996年の阿部弘一先生の『風景論』が現代詩人賞を受賞された時の、受賞式における大野一雄さんの舞が、恐ろしく感動的だったのを、また思い出す。
阿部弘一先生は私の恩師である毛利武彦先生の御親友で、ポンジュなどを訳されてもいる詩人。
あの時も授賞式会場の後ろのドアからゆっくりとにじり寄るように登場された。
もう息をのんでしまって・・・
ディヴィーヌの衣裳ではなかったが、舞の雰囲気は似ていて、生成りのアンティークドレスだったように思うのだが・・・
スポットライトも段差もない、詩人たちがただ椅子に座ってる会場が、まったく違う、大野一雄さんの世界一色に変貌してしまって・・・それは凄まじい体験。
舞踏の最中は遠慮して写真を撮れなかったが、あまりに心身を持って行かれて涙が止まらなくて、どうしようもなかった。
・・・
この大野一雄上映会に、40℃近い猛暑の中を、ギャラリー十二社ハイデにいらしてくださったお客様に心より感謝申し上げます。
かなり前から私の文章を好きでいてくださって、私の文章の緊張感によってすごく緊張すると言ってくださったことに言葉もないほど感激しました。
また、この日、帰宅途中、西新宿駅近くの舗道でMが踊ってくれて、そのあと十二社の石段まで戻って、またそこで踊ってくれた。
ヒメムカシヨモギ、アレチノギク、オヒシバ、メヒシバ、エノコログサ、ヤブカラシ、ヒルガオ・・・
むせるような夏の終わり。
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