8月8日(木)
M・Mさんが高知で会って来た友達の写真を見せてくれた。短髪で日焼けして、ものすごい上腕筋と厚い胸をした人。
「すごい筋肉。彼、こんな体形でマッチョじゃないの?」と聞くと「マッチョじゃないですよ。彼はムサ美の油科出てるんです」と。
その人も農業をしているそうで、やはりM・Mさんのまわりは私が今まで知っている美大卒の人とは全く違う人たちが集まっているみたい。
それととても古い石橋と小さい紅色のカニがいる写真。私は地味な色のサワガニしか見たことがなかったので驚いたが、高知では特にサワガニが赤いらしい。
「あなたは個人主義的アナキストなの?」と聞くと「え・・と・・」と首をかしげて考えていて、定義はよくわからないようだった。「でもそういう生き方をしている人同士で助け合えたらいいと思ってます」
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古い小説などの本を探しているというリサイクル買い取りの勧誘の電話が昨日、ちょうどあったので、今日2時半に西新宿の生家のほうに来てもらうことにした。
ネットなどでそういうリサイクル買い取りの怖い評判(強引に貴金属を漁られる)は知っていたけど、実際、どんなものが経験してみるのもいいと思った。
2時半に鑑定のIさんという男の人が一人で来た。「玄関の外ではなく玄関の中で」と何度も言われる。
「店舗はどこにあるんですか?」と尋ねると「銀座」と言われてびっくり。最初の勧誘の電話の女性は確かもっと郊外にあると言っていた。
紐でくくってある本の山の写真をスマホで撮って、どの山を持って帰れるか本部に問い合わせている。
その間「今キャンペーン中で」と言われ、こういうものを3点出せば1万円渡せるというプリントをくれた。
しかし結局、メッキでもいいから金のついたネックレスがないかとしつこく聞かれる。重い金色の黒蝶貝のぶら下がったネックレスがひとつあって、それが金メッキで金を分離できるそうで、その場で計って30gくらいだった。
「あと5gあれば5000円出します」と何度も言われたけど無い。結局、これは取っていかなかった。
黒い箱に入っていたご贈答品の古いお酒(ブランデー?)があったので見せたら、それは1000円と言われた。
2階の天井裏に上がって掃除してくれていたM・Mさんに「あのお酒、1000円だって。どう思う?」と聞いたら「渡しちゃだめですよ。あれネットで1万円以上の値がついてたんだから。」と言われて
「渡したくないって。だからやめます」と言ったら「そのお酒は2000円出します」と言われたけど断った。
「貴金属は売りたくないものはもう自宅に持って帰ったんでここには無いです」と言ったら「いつですか?」「きのう」「最近じゃないですか!今日、どんなに遅い時間でもいいですからご自宅のほうに行っていいですか?」とギラギラした目で言われた。
「この後も仕事なんで、無理です」とお断りしたが、何度も「今日、行っちゃだめですか?」と聞かれる。
結局、昔、母が持っていた象牙のネックレス2本で100円(「象牙は売れないから」という)、淡水パールのネックレス100円、古い腕時計(「部品を取り出すしかない」という)4個で300円。
あとは汚れていない文庫本(バーコードがついていない古いもの)を鞄一杯持って帰って500円、合計1000円くれた。
これは値がつかない、これも値がつかない、とガンガン言われてぎらぎらした眼でたかられて、その人が帰った後、すごく嫌な気分になって胸がざわざわした。
まあ、値がつかないと思っていた黒蝶貝のネックレスが実は金メッキだったことがわかってよかった。それも合わせて貴金属は高円寺の査定してくれるところに持って行こう、と思った。
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M・Mさんは、「天井裏のネズミの糞を吸い取るのに昔の掃除機の共通で使えるゴミパックやフィルターを買わなければいけない、それと水道の蛇口の緩みを直す部品がいるので中野のホームセンターまで行って来ます」と言って自転車で出かけて行った。
私はそのあいだせっせと写真や書類の整理とゴミ分類をやった。
M・Mさんが1時間ちょっとで帰宅し、その頃、私はやっとこさ大きな箱いっぱい溜まっていた思い出の遺物を空にすることができた。
M・Mさんは、1階の水道の蛇口は中が壊れているようでうまく直らなくて、もう一度ホームセンターに行かないといけないという。
買い取りのせいですっかり精神が疲れてしまい、ぼんやり見ていたら「そんな心細そうな顔で見ないでください」と言われた。
彼は19日から22日まで伊豆に伐採の仕事に行ってくるという。「お土産になんかいいものを・・木材を持ってこられると思います」と。
8月10日(土)
訪問買い取りが来る前にしっかり自宅に持ち帰っていた貴金属類(昔、母が私にくれたもの)を高円寺のジュエリーヤマモトさんに持って行って見てもらった。
山本さんは以前にデザインのバイトをさせていただいたり、委託していただいたり、たまにおしゃべりしたり、親しくしていただいているかた。
金やプラチナの今の値段を調べて、きちんとひとつひとつ計って値段を出してくださった。
なんのデザインもない地味な指輪が数万円。自分の予想をはるかに超えている。
「象牙のネックレス1本50円とかひどすぎる。1000円でも2000円でも欲しいっていう人はいるはずだよ。今は売れないって言ってるけど売れるから取って行ってるんでしょ。」と言われ、
本当に本だけしか出さないでよかったのに、私は古いネックレスや腕時計などなんで出してしまったんだろう、ばかだったと今更思った。
出したくないのに出してしまったこと、これがすごい精神疲労の原因。自分が圧迫に負けたということ。
最初に電話が来た時に「本を求めている」と言われて「本ならあります」と言って約束したのに、そのほかのものを持って行かれるのは、もし売るほうが嫌がっているのならば確か違法だったと思う・・・
「取り戻せるなら取り戻したらいいよ」と山本さんに言われて、クーリングオフの電話を掛けた。
今日からお盆休みに入っていると言われたが、受け付けてくれた。