ギャラリー十二社ハイデ

2025年12月 5日 (金)

ギャラリー十二社ハイデでのデッサン教室・「絵」の話

ギャラリー十二社ハイデのデッサン教室

12月は、6日(土)17時~と20日(土)17時~ 各2時間となります。

参加ご希望のかたはギャラリー十二社ハイデのHPの問い合わせからメールください。

11月29日(土)

ギャラリー十二社ハイデでのデッサン教室。

新宿西口中央公園の木々の色づき。後ろに都庁が見えます。
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かわいいかたちの十二社熊野神社前交番。ギャラリー十二社ハイデでは、ここから徒歩3分くらいのところです。

今日初めて参加のK君には自分の手を描いてもらった。
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K君は美大生なのでちゃんと描ける人なのだが、余計な塗りを入れないで、必要最小限のかたちのかわり目のタッチと

繊細な骨格、皮膚の立体感に添った皺だけで人の手の感じを出すように描いてもらいました。

微妙なニュアンス、生命的な皮膚感を大事にしたい。

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I君はケイトウ(鶏頭)。この花は柔らかくてギザギザもこもこした質感を2Bの鉛筆でガシガシ描いてもらった。

垂れ下がったフリルの曲線部分と光っているエッジ、暗い穴のような部分を強調して描きます。

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アケミさんには薔薇を描いてもらった。

この薔薇には花弁とも葉とも判別できない緑色の筋のあるものがついていた。

私はそういう畸形の花に巡り合えると幸運と思う。

私は花屋でそういう変形の花を選んで買う。

そういう奇妙で独特な部分を持っているのが、花の真実だから。

そういうところに面白さや美しさを感じるから。

アケミさんは「ええ!?そうなの?そういう畸形がない花を選んで描くのかと思ってた」と。

花のどういうところに「美しさ」や「それらしさ」を感じるかは非常に微妙なところだが、そこに画家の体質や神経が出るのではないだろうか。

アケミさんが別の絵画教室で、ビニールやプラスチックでできた果物や造花をモチーフに描いていたと聞いて愕然としたが、

工業製品の造花には畸形や個体の個性が無い。

一般になんとなくそれっぽく見える単純化した記号を造形化したものを描いて、それで満足できるのは、本物を見てもその程度の絵しか描けないからなのだろう。

「現代アート」の行為として、あえて造花を描く、という意図ががはっきりしているのなら理解できるが、そうでなくてそんなモチーフを出されたら、私なら爆発してしまうだろう。

・・

終わってからK君と新宿駅方面へ歩き、絵の話をした。道沿いの樹々に年末恒例のネオンがキラキラしている。

それから西口のカフェで9時半まで話した。

K君もいろいろ悩んでいるみたいだ。

「自分が本当にやりたいことを追求していったとしても、他者に認められなければ、自分が本当にやりたいことはなんなのかもわからなくなってきてしまう」と言ったら

K君は「そのとおりです」と言った。

自分の悩みや苦しみを表現しても、それは「自己表現」にしかならず「表現」未満だ。

絵画は絵画として成り立たなければならない。

そして「芸術」である「絵画」には、必ず「問いかけ」が存在している。

美大時代、私は決して楽しい学生生活ではなかった。

入学してすぐに、とんでもないところに来てしまったと思った。

純粋に信じて絵に打ちこめた予備校(高3)時代が懐かしかった。

私の場合は絵の世界の構造のようなものが見えてしまったから。

そんな業界に自分が入ってやっていけるはずもないと思ったし、今でも18歳の時のその直観は正しかったと思っている。

美大なんかに入ったら悩むのは当たり前だろう。

自分が絵になんの(どういう)価値があるのか、絵なんか描いていていいのか、

そもそも「絵を描く」ということがどういうことなのか、

それを考えないで、ただ楽しく描いている人の絵は、たぶん絵未満なのだと思う。

恩師、毛利武彦は、絵になっていないものを「見るべきところがない」と言った。

若林奮先生は「絵になっているか、なっていないか。あなたのは絵になっています」と言った。

今の私には、ほぼ明晰にそれが見えていると思う。

若い頃からよく「絵が好きなら○○も好きでしょう」とか「絵が好きなら○○を見に行くといいよ」などと人に言われて戸惑った経験があるが、

本当に絵が好きならば、絵未満のものに全く興味がないし、むしろストレスになるのだ。

真っ赤なポリの造花を「素敵でしょう?」と言われているのを同じく、絵のまがいものを見ることはストレスになる。

アートフェアに行った時、作者の名前を見ないで、作品に強く惹かれたものだけ、その近くに行って名前を確認すると、すべてもう亡くなっている画家だった。

その作家の世に知られている画風でないものもあったが、燦然と、絵として存在してた。

具象、抽象、コラージュに関わらず歴然としていた。

そして私がすごい画家だと認める人たちは、全員、その人独特の詩的言語もすごいということ。

私の感覚では、その人の言葉を読んだ(聞いた)時点で、どの程度の絵を描く人なのか知れてしまう。

言葉がばからしいと感じた人の絵は、やはり絵未満でしかない。

「絵」を描くということは全身の運動であり、総合芸術だということ。

すごい絵を描ける人はすごい詩的文章を書けるし、詩的映像や写真も撮れるし、すべてに対して慧眼でありラジカルである、と私は思っている。

すごい絵には哲学的な「問いかけ」がある。

たぶん私が志向しているのはとうにこの世に存在しない「芸術家」というもので、私は結局そういう人にしか興味を惹かれないのだ。

 

 

 

 

 

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2025年10月25日 (土)

足利市立美術館コレクション展トーク / 『デッサンの基本』40刷・デッサン教室

10月25日(土)

足利市立美術館コレクション展2025「いのちの寓話」本日、展示始まりました。

私の絵は8点展示していただいています。

明日14:30頃より、私が絵の前で短いトークをします。

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足利の学芸員の篠原さんが3年前に約束してくださった「若林奮先生の向かい側に私の絵を展示する」という夢が叶いました。

興味がおありのかた、お近くのかた、よろしくお願いいたします。

同時開催「刀装の美」、刀剣乱舞ファンのかたがたくさん来られるそうで、足利市内のホテルは満杯とか。

「刀装の美」を見に来られるかたも、ついでに見ていただけたら幸いです。

10月24日(金)

『デッサンの基本』(ナツメ社)ついに40刷となりました。

(たぶん)デッサンの実用書ではたいへん珍しいロングヒットだと編集さんに言われました。

買ってくださったかた、読んでくださったかた、ありがとうございます。

18:30~ギャラリー十二社ハイデでのデッサン教室。

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私の個展でいただいた花もあり、たくさんの花の中から自由に一本選んで描いてもらいました。

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今日初めて来られた15歳のHさん。この完成度、すごくないですか?

なんと(私の影響か?)花が枯れているテッセンを選びました。

まず茎と花芯から描くこと、花は大きめに、花芯の部分強くアクセントに、

葉の柄はくるりと曲がっているところが面白いので生かす、

葉の柄や茎は自由に曲線を生かして描いてかまわない、

葉は輪郭の波立ち、柔らかな曲線をよく見て、すうっと力を抜いて線を描く、

葉の先端、花びらの先端のちょこっとくびれて曲がっているところを大切に、

葉の柄の付け根のところに小さい芽が2本ずつ出ているところをちゃんと描く、

画面いっぱいに描いてこの繊細さ。素晴らしい出来です。

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薔薇を選んだIさん。

薔薇を描くコツは、萼、茎が葉のついているところからジグザグにしなっているところ、托葉を丁寧に描く。

花芯、しべをアクセントに強く丁寧に描く、

花びらの規則性をよく見る、真ん中の花弁は5,6枚ずつ重なって巻いている、

花びらの輪郭のギザギザ、花びらの真ん中のすじを描く。

実物を見ながら説明すると「なるほど。ここ見えていませんでした」と素直に聞いてくれるIさん。

上達が早いです。

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アケミさん。私の好きな雑草ノゲシ。

なんかもうあまり言うこと無くなってきたくらい、上達しています!

今日の完成度は素晴らしい。私はアタリをつけていません。すべて本人の力です。

「見た通りに描く、と思いながら漫然と描いていると絵が固くなる、茎や葉のしなやかさを意識して、しなやかさを「見せる」ようにして描くと

断然リアルな絵が描ける。植物の特徴や規則性を理解したら茎は自由に曲げて描いていい」

と私に言われたことで、俄然、描きやすくなったということです。

 

 

 

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2025年10月15日 (水)

福山知佐子個展4日目

10月14日(火)

ギャラリー十二社ハイデで福山知佐子個展の4日目。

今日は私の高校のA先輩が一番乗り。

A先輩の親友で、私が美大受験予備校に迷っていた時に、高校の一番近くの小さな美大予備校(もうとうの昔に無くなった)を紹介してくれたM子先輩が癌で亡くなったことを聞く。

言葉にならない。私と同じ武蔵野美術大の先輩でもあり、とても気持ちの優しいかただった。

その後斎藤哲夫さんが来てくださった。

哲夫さんは私の最初の個展の頃からずっと来てくださっている、芸能人的な気取りが無くて、本当に温かい人。

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スケッチブックのデッサンを真剣に見てくださって、枯れた花の絵に「華やかだ」と。

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ツアーから帰ったばかりなのに明後日手術とお聞きする。

私は最初に甲状腺癌に気づいた時には肺に粟粒状転移していて4期。その時に、15年くらい経ったら肺の粟粒上転移が急に活性化する時が来る可能性が高い、そうしたら成すすべはない、と最初の執刀医の浅井先生に伺っていて・・・

その転移の活性化が15年ではなくて30年後(忘れていた頃)に来たのだけれど、甲状腺癌の肺転移手術という前例のない(麻酔が切れた時に気が狂いそうなくらい痛い)手術を受け、

さらに脳転移にサイバーナイフを受け、認可になったばかりの分子標的薬レットヴィモ(30年前にはこんな薬ができるなんて想像もできなかった)を服用して、

まあなんとか元気に生きている、ということをお話したら「すごい経験をしてきてるね」とけっこう元気づけられたようだった。

12月からのツアーを全部キャンセルされたと聞いて「キャンセル料とかだいじょうぶなんですか?」と聞くと

「それがだいじょうぶなんだよね。ライブハウスはさ。これが大きな会場だったら死んででもやらなきゃいけなかった」と。

お互い頑張って生きようとハグ。

そのあといつも優しい古い友達が来てくれた。

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それから今日は私ひとりなので心細くて来てほしいとお願いしていた詩を書くUさん。Uさんはとても鋭敏なかたで、神経と言うのか・・話が通じるのが嬉しい。

いつもマッサージでお世話になっているWさん。

Uさんはなかなか食事ができない私のために柿を剥いて切ったものを容器に入れて持って来てくださった。

Wさんは私の生家の古い雰囲気をとてもいいと言ってくれて、それからナニワイバラとハゴロモジャスミンの絵をすごく気に入ってくれたそう。

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2025年10月12日 (日)

福山知佐子個展 1日目

10月11日(土)雨

ギャラリー十二社ハイデでの個展初日。

雨で、私としてはもう辛いほど寒かった。2階の箪笥の中から何十年も前のセーターを引っ張り出して重ね着した。

夕方、足利市立美術館の篠原さんがいらしてくれた。今回は美術館の展示替えでどうしても休めないから行けないと言われていたのに、休みがとれたそうだ。

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つい先日、チェコから帰国したとお聞きしたのに、きょうもいくつか回って来られたみたいで、本当にそのエネルギーには驚嘆してしまう。

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ギャラリー十二社ハイデの管理人のアケミさんは愛知県の出身なのだが、篠原さんも栃木県に行く前に愛知県に住んでおられたそうで、

ふたりで愛知のローカルな(私のよくわからない)話ですごく盛り上がっていた。

アケミさんは篠原さんと初対面だが、篠原さんの仕事への情熱、行動力とお人柄にたいへん魅了されたようだ。

私の来年の仕事関係の話について、私はあまり自信がないのだけど、篠原さんが「だいじょうぶ。俺がうやむやにはさせないよ」と断言されて・・

「ええ?」と驚く私に「これで少し安心した?」と篠原さん。

これには私もアケミさんも言葉が出ないほど感動した。なんでそこまで親身になってくれるのか。

想像がつかないほどたくさんの作家さんを助けてきたかたなのだと思う。

本当にただただ頭が下がる。

 

 

 

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2025年10月 3日 (金)

ギャラリー十二社ハイデで福山知佐子個展を開催します

ギャラリー十二社ハイデ(新宿区西新宿4-12-3)で

福山知佐子個展を開催します

10月11日(土)~10月19日(日)

15:00~19:00

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「あねもね」

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「シスル」

この2枚の絵にはものすごく思い入れがあったけど、ついに行き先が決まり・・(本当に?)
東京で展示するのはこれが最後となりました。

自分のボロボロの生家で自分の絵を展示して人様に見てもらう日が来るとは、まったく想像だにしていなかったけど、

そんなことになり不思議な思いです。

皆様のお越しをお待ち申し上げます。

詳しい地図はこちら

<https://gallery-junisoheide.jimdofree.com/p> 

 

 

 

 

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2025年9月23日 (火)

花輪和一展を開催します 9月27日~28日、10月1日~5日

ギャラリー十二社ハイデにて花輪和一展を開催します 

9月27日(土)~9月28日(日)15:00~19:00

9月29日(月)と9月30日(火)は休廊

10月1日(水)~10月5日(日)15:00~19:00

地図などはこちらから
https://gallery-junisoheide.jimdofree.com/

直筆色紙、オリジナル原画のシルクスクリーン帆布バッグ(サイン入り)、シルクスクリーンTシャツ(サイン入り)花輪和一の愛読していた本など販売。

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直筆色紙、いろいろあります。

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シルクスクリーン、帆布バッグいろんな色あります。
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花輪和一23歳の時の幻の作品「巨象ビンゴ」、名作「ゲラヒヒの紋章」、「黄金谷秘話」「大密林」などの超貴重な原稿の展示、
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 花輪和一さんが観客の前でしゃべっている、おそらく唯一の映像、2005年の花輪和一×福山知佐子対談の上映。

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私も花輪さんも若かったなあ・・・
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皆様のお越しを心よりお待ち申し上げます。

シルクスクリーン制作風景。7日間くらい毎日やっていました。細かい修正など手書きでたいへんでしたが楽しい作業でした。

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2025年9月18日 (木)

デッサン教室、植物、ヤブカラシ、りんご

9月12日(金)

ギャラリー十二社ハイデにてデッサン教室。

晩夏の生き生きした野草を描いてもらいたくて、ヤブカラシを採取してきました。ヤブカラシはとても変わった美しい花です。

緑色の見えないほど小さな花弁が落ちると、花台というオレンジやクリーム色のかわいらしい部分が蝶を誘います。

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アケミさんの描いたデッサン。

途中で「もう無理~難しくて見られない~」と言われたので、私が「あたり」(薄い下書き)をささっと描きました。

そうしたら「すごく描きやすい」と。

描くこつは、まず、植物の規則性を見つけることです。

ヤブカラシの花の柄は最初3つに枝別れしていて、次がそれぞれ2つに枝分かれ。

そこから5回か6回ジグザグして末端の花。

葉は互生で、葉の逆側に巻きひげがついています。

ひとり一本ずつ蔓を左手に持ってよく見ながら描いてもらったのですが、まず、花や葉の表が見えるように、絵として魅力的で描きやすい方向から描くことが大事です(横からや裏からは描きづらい)。

蔓の曲がり方は、画面の中で絵になるように自由に曲げて描いてOKです。

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石黒さんのデッサン。花はよくがんばって見て描けました。

茎と巻きひげがちょっと直線的になっていたので、蔓植物は柔らかく曲線を強調して描くように、私が修正を入れました。

蔓の葉や巻きひげが出ている部分(ふし)を盛り上げて強く描き、ふしとふしのあいだの蔓は曲線を意識してしなやかに描きます。

「なるほど。こうやると全然絵が違ってきますね」と言われました。

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工藤さんのデッサン。花と巻きひげの表情、良く描けました。

工藤さんは夏の植物を見るために乗鞍岳にリゾートバイトに行っていたとのこと。

私も好きな大反魂草をスケッチして来たのを見せてもらいました。

9月6日(木)

阿佐ヶ谷コミュニティセンターにてデッサン教室。

80歳の富永さん。林檎を描きたいと持参されました。

最初、置時計を描きたいので持ってくると言われた時はどうしようかと思った。

左右対称にパースをつけて製図してちゃんと形を取るのは難しすぎるので。

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まず、3つの林檎をくっつけて置かれていたので、2つは斜めに重なるように、ひとつは少し離して置くように変えました。

拙著『デッサンの基本』(ナツメ社)を持って来てくださり、りんごのかたちのとりかたを見ながら描かれました。

いつも油彩でべたべた厚塗りになるので、違うやりかたを知りたいとおっしゃられたので、軽くかたちをとってから水彩で、まず全体に黄色で下塗りしていただきました。

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黄色が乾いてから、赤い筋の方向をよく見ながら、りんごの表面に添って入れていきます。

林檎の柄をしっかり描き、窪みの部分の影と緑色のところも強調して描きます。

台も塗りたいとおっしゃられたので、木のテーブルの色を淡く塗りました。影も少々、自然な感じで。

最後に白でハイライトを入れました。

さらっと描いてりんごらしくできました。

 

 

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2025年8月31日 (日)

大野一雄「美と力」上映会

8月30日(土)

ギャラリー十二社ハイデで大野一雄さんのVHS「美と力」の上映会。

土方巽演出の衝撃的な「ラ・アルヘンチーナ頌」(ジャン・ジュネの『花のノートルダム』のディヴィーヌ)・・・

大野さんが初めてアルヘンチーナの踊りを生で見てダンスをやろうと思ったという、希少な実際のアルヘンチーナの舞踊映像・・

明るく愛らしくふくよかで軽快に跳ね回るアルヘンチーナの踊りに感激し、

アルヘンチーナを頌える踊りとして、生と死のはざまの男老娼ディヴィーヌを踊る、その凄まじさ。

死にゆくことで生きるような、拈華微笑のような・・・とてつもない妖艶。

そして大野一雄さんの生い立ち、土方巽との「バラ色ダンス」など盛りだくさんの内容。

1時間見たところで、あまりのエネルギーに圧倒され「休憩していいですか」の声が上がる。

VHSなのでいつでも止めて休憩できるのです。

お茶とサンドイッチをとってしばし、だらける。

上映再開。そして後半50分。

「わたしのお母さん」。赤い朱塗りの御膳をお母さんに見立てる。これもすごいのだけど・・・

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そして私もまだ生々しく覚えている1998年の「愛の夢」。

大野一雄先生の舞踏は何度も見に行っているので、場所ははっきり覚えていないが、テアトルフォンテ「わたしのお母さん」の舞台のラストで踊られたものだったのだろうか・・。

この時、大野さんは92歳。もっとも身体がドラマティックに動いていたように見え、まさに「愛の夢」に向かって駆けだすように、切なくも希望に満ちた笑顔を中空に向けて力強く舞ったのを私は間近で見たのだ。

すぐ近くに座っていた高橋睦郎さんが頬に幾筋もの涙を流しているのを見た。

名状しがたい激しい感動。

98年には「天道 地道」も見に行っている。

そしてこの年の10月には、私の銀座での個展にもいらしてくださって、絵の前で踊ってくださった。

画廊に電話があって、私が出ると「おーのです」と言われて、一瞬誰だろう?と思ったら「おーのです。今から踊りに行きます」と言われて仰天したのだった。

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曲目は大野慶人さんが持ってらした小さなカセットデッキでかけられたマヘリヤ・ジャクソン「I believe」とエルヴィス・プレスリーの「愛さずにはいられない」。ただ号泣しかなかった。

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画家だった大野一雄さんの叔父様の絵の資料をくださって、本当に感無量でした。

そう、その前に1996年の阿部弘一先生の『風景論』が現代詩人賞を受賞された時の、受賞式における大野一雄さんの舞が、恐ろしく感動的だったのを、また思い出す。

阿部弘一先生は私の恩師である毛利武彦先生の御親友で、ポンジュなどを訳されてもいる詩人。

あの時も授賞式会場の後ろのドアからゆっくりとにじり寄るように登場された。

もう息をのんでしまって・・・

ディヴィーヌの衣裳ではなかったが、舞の雰囲気は似ていて、生成りのアンティークドレスだったように思うのだが・・・

スポットライトも段差もない、詩人たちがただ椅子に座ってる会場が、まったく違う、大野一雄さんの世界一色に変貌してしまって・・・それは凄まじい体験。

舞踏の最中は遠慮して写真を撮れなかったが、あまりに心身を持って行かれて涙が止まらなくて、どうしようもなかった。

・・・

この大野一雄上映会に、40℃近い猛暑の中を、ギャラリー十二社ハイデにいらしてくださったお客様に心より感謝申し上げます。

かなり前から私の文章を好きでいてくださって、私の文章の緊張感によってすごく緊張すると言ってくださったことに言葉もないほど感激しました。

また、この日、帰宅途中、西新宿駅近くの舗道でMが踊ってくれて、そのあと十二社の石段まで戻って、またそこで踊ってくれた。

ヒメムカシヨモギ、アレチノギク、オヒシバ、メヒシバ、エノコログサ、ヤブカラシ、ヒルガオ・・・

むせるような夏の終わり。

 

 

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2025年6月 6日 (金)

ギャラリー十二社ハイデのアートフリマ / 暴力の話

6月1日(日)

ギャラリー十二社ハイデにてアートフリマ開催。11時~17時。

11時スタートで、私は11時に着いたらもうお客様がけっこういらしていた。

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作家さんたちのご友人のかたがたがずっと途切れずいらしていて、10足くらいしかないスリッパが足りないくらいでした。

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作家さんたちの作品はどんどん売れていた。

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私は・・昔買ってずっと使わずに箪笥の中にしまっていたPowderのフランケンシュタインとカンガルーのハンカチ、

ラインストーンのトカゲとカエルのブローチ、実家から出て来た贈答品のサンローランやダンヒルの男性用靴下などが売れました。

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K野さんから預かっていた95年の清志郎のツアーの時のTシャツ(未使用品)も、私が交渉して4500円で売れました。

散歩でふらりと寄ってくださったかたも数人いて、「昔、この辺りに尼さんが住んでいて・・」など、私がすっかり忘れていた幼少期の話をされてびっくりしたりもした。

・・

友人で優秀な編集者のM子さんがいらしてくださって、以前伺っていた共通の知人に仕事で騙された話(共同の仕事なのに仕事をしないでお金だけ取られて、まるで仕事の責任者のように本に名前を載せられたこと)がやっと一段落したという報告をいただいた。

何も悪いことをしていないという態度で馴れ馴れしくまた連絡してきた本人に(そのメールを見ただけで心臓がばくばくしたという)、どんなに酷いことをされて精神的におかしくなるくらい苦しんだかをメールで伝えることができた、ということ。

M子さんがその体験を私に告白されたのは昨年の展覧会の時だったが、「いつどこにでも告発できるように、やられたことと苦しんだことをわかりやすく、すべて書き残しておいたほうがいい」という私のアドバイスが役に立ったと言われて、私でも少しはお役に立てたのかと嬉しかった。

加害者はそこそこ一部では名の知れた人なので、実名でどこかに告発しても良かったと思うが、とにかくやっと本人に言えたことがよかった、これで完全に縁が切れることもよかった、とのこと。

この件は非常に性暴力の構造に似ていて、年上の男性にいいようにされて、どんなに反論しても一切聞いてもらえなかったとのこと、

そして暴力をしたほうは、なにもなかったように馴れ馴れしい態度をとり、こちらが本当のことを言うと

「そんなふうに思われていたなんて驚きました」「全く悪気はなく」というような自己正当化の言い訳をしてきたとのこと。

その人は私に対しても含め、昔からおとなしそうに見える女性へのセクハラ行動が目に余る人である。

M子さんの話を聞きながら、ふたりで中央公園を歩き、そこここにいる外国人観光客に私が英語で話しかけてアートフリマのチラシを渡した。

6月最初の日曜日。公園にはきれいな光がさして、たくさんの人がのんびりしていて、紫陽花が咲いていた。

「この真っ青で少し花が小さめなのが日本紫陽花。シーボルトが彼が好きだったオタキさんの名前をつけてオタクサと言う学名をつけた」と私が言うと、M子さんは

「覚えておきます」と言った。

「こっちの白い花はシモツケ」

「それも覚えておきます」と。

 

 

 

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